「うちの子は寝返りをしない、なんで?」
「同じ誕生月のあの子はもう歩いているのに、うちの子はようやくつかまり立ちが出来たところ、これっておかしいよね?」
「周りの子と比べてうちの子は身体が小さいけど、私の育て方が悪いのかな?」
「男の子だから言葉は遅いっておばあちゃんは言うけど、大丈夫かしら?」
可愛いわが子の事となると、心配は尽きないものですよね。
それは一生懸命子育てしている親ならば、当たり前の感情です。
でも、わが子を心配するあまり、大好きなお母さんお父さんの表情が雲っていると、赤ちゃんも不安を感じます。
人間の発達の道すじは、健常でも、何かしらのハンディキャップがあっても、みな同じ。
人として生まれた限り、どんな赤ちゃんでも同じ道すじをたどって発達していくのです。
「発達の道すじって?」
私は児童相談所の心理カウンセラーとして、発達に心配のあるお子さんの発達相談や療育相談、発達検査・知能検査を行ってきました。
たくさんのお子さんやその親御さんに接する中で、よくお話してきた言葉があります。
それは人の発達には「熟す時期がある」ということです。
例えば、新生児の「寝返り」行動を例にあげます。
大好きな大人が自分の反対側にいるとき、または面白そうなおもちゃがちょっと向こう側にあるとき。
赤ちゃんは考えます。
「大好きな大人の顔がみたい!」
「あのおもちゃが欲しい!」
そこで、赤ちゃんの心に葛藤が生まれます。
はたして、自分は自分の身体をコントロールして、あちらを向けるだろうか、、と。
生後間もない赤ちゃんは、日々手足や身体を動かして、自分の身体をコントロールすることを学んでいます。毎日が気づきの連続です。
あんな小さな赤ちゃんですが、毎日いろんなことを心で感じ、考えているのです。
そんな葛藤の中で、「お顔がみたい!」「おもちゃが欲しい!」という心の「思い」と
自分の身体の重心をコントロールできる運動能力・筋力が合わさった時、寝返りは成功するのです。
ともすれば、大人は「できる、できない」ばかりにとらわれがちですが、大切なことはその過程であり、プロセスなのです。
そして勇気をだして寝返りが出来たときが「期が熟したとき」になります。
その出来たという達成感を土台に、「心のバネ」ができ、また次の発達へチャレンジしようという意欲につながっていきます。
発達の主人公は「赤ちゃん本人」である。
一生懸命育てているお母さんお父さんの願いは
「すくすくと育ってほしい」
これにつきますよね。
育児の情報に溢れている今の時代は、周囲と比較する機会も多く、初めての子育てはわからないことだらけ。
わが子の心配=自分の育て方のせい?
と感じるのは当然です。
「あの子はできて、うちの子はできない」
「できる、できないばかりを気にして落ち込んでしまう、、」
でも、ちょっと待ってくださいね。
発達の主人公はあくまでも「赤ちゃん本人」なのです。
人間の発達は、先にも述べたように身体的な能力の発達と、心の発達が結びついてつくりあげられているものです。
そして、身体も心も1人1人違います。それが「個性」なのです。
赤ちゃん自身が
「やりたいけどできない」
「やった!できた!」
「またやってみよう!」
そんなプロセスを感じている時、大好きな人がそばで応援してくれたり、喜んでくれたり、
赤ちゃん本人の気持ちを共有してくれる。
それが赤ちゃんの発達のために一番貴重なことなのではないかなと思っています。
寝返りは何か月、お座りは何か月、一人歩きは何歳、、
そんな指標はあくまでも指標です。
指標はあくまでも参考にとどめておいて、目の前の赤ちゃんの成長をじっくりみつめ一緒に楽しみましょう。
ただ、指標は次の発達の道しるべの参考にはなります。
次はこういうことにチャレンジするんだろうな、ととらえ、赤ちゃん自身が持っている力を発揮できるようにあたたかく見守りましょう。
乳幼児の発達に関しては、大きく分けて「移動運動」「手の運動」「基本的習慣」「対人関係」「発語」「言語理解」があります。